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尼崎双星高校編 2021年度⑨高校生が小学生へ教える「リレー型体験学習」 Vol.2


2021年11月の高校生(商業)フェアでは、子どもにロボット体験プログラムを試してもらい、大人には宣伝チラシについてのアンケート調査に協力してもらいました。年が明け、2022年1月。これらのテストマーケティングの結果、小学生向けロボット体験イベントの内容を改善し、クレーンゲームから「みかんまんじゅう」の製造工程というストーリーに変えてロボット操作を「仕事」に見立てました。操作練習に台本読み合わせと、準備は着々と進んでいきました。


ストーリーのある「みかんまんじゅう」製造へ



高校生(商業)フェアで「簡単すぎる」との指摘も


小学校でのロボット授業で行う予定の体験プログラムに対し、子どもたちがどんな反応を示すのか。テストマーケティングのような位置づけで、2021年11月に高校生(商業)フェアへブースを出展し、来場した子どもたちに体験プログラムを試してもらうデモンストレーションを行いました。
体験プログラムは、アームロボットがブロックをつかんで動かすと下に高校生の描いたイラストが出てくる仕組みです。対象が小学生のため、操作を簡単に設定しました。
すると、楽しんでくれた子ももちろんいましたが、「簡単すぎる」「単純」といった声も聞かれました。今の小学生は学校でプログラミングの授業を受けていたり、習い事に通ったりして操作に慣れている子もいるのです。中間発表会や企業取材などの授業を経て、年が明けた2022年1月。慣れていない子も、経験のある子もどうやったら楽しめるか、高校生たちは難易度や内容を再び考えました。

大学生と高校生の協力で「みかんまんじゅう」誕生

高校生をサポートする大学生も一緒に考える中、あるアイデアが生まれます。それが「アームロボットによる『みかんまんじゅう』製造」の設定です。そこから高校生が、小学生向けの台本を考えました。
「まんじゅう屋さんで商品の人気が突然急上昇し、注文が急増。それまでの手作業では対応しきれないため、自動で箱詰め作業を行うアームロボットを導入した。ロボットがみかんまんじゅうをどんどん箱に詰めていくので、作業効率が大幅に向上した」という工場の機械化を表すストーリーです。小学生がロボットに指示をするオペレーターとなってアームロボットを操作。パソコンへの入力により、みかんまんじゅうに見立てたピンポン玉をつかみ、上下や左右をコントロールして箱に収めるという手順にしました。

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練習を重ね準備万端に。しかし、無念の中止



いよいよ「次回は小学校へ」のタイミング


体験内容や当日の役割分担が決まり、高校生たちはロボット操作練習や台本の読み合わせなどシミュレーションを重ねました。がんばってつくった宣伝チラシも、小学生へ配布する体験イベントの資料に使用しました。
ところが、いよいよ来週は小学校でのロボット授業本番というタイミングで、新型コロナウイルスの感染拡大状況が悪化。中止になってしまいました。2月に予定していた、校内へ小学生を招いて行う体験イベントも同じく中止に。
2021年9月から5か月にわたり学び、準備をしてきたイベントを小学生に楽しんでもらうことができなくなり、高校生はもちろん、大学生やスタッフも残念、無念でした。
高校生のコメントです。
「高校生役と小学生役に分かれて操作方法を確認するシミュレーションをした。途中まで順調に進んだけれど、ミスに気付いて最初からになってしまうことがあった。でもそのおかげで、再確認できてスムーズに進められるようになった。操作も分かってきたところだった」

それでも前を向く高校生たち

そして1月末、最終授業の日を迎えました。
生徒たちは「残念だけれど学んだこと、話し合いなどは無駄ではないし、次の学年にもつながるのでよかった」「とても残念で悔しかった。でも今までに行った活動は自分のためになったことが計り知れないほどあった。とても意味のあるいい経験」と前向きでした。
ほかにも「本来小学校でする予定だったイベント内容を自分たちで実際にやってみて、改善点や疑問点を挙げた。来年の生徒の課題研究が素敵なものになる糸口をつくった」と、来年への期待も聞かれました。

最終授業でのメッセージ



弊社社長の畠中は、最終授業で「せっかくみんなが準備してくれたのに、小学校のイベントが中止になり、申し訳ございませんでした」と頭を下げ、「みんながつくってくれた授業は、来年、必ず小学校でやります。後輩たちと一緒にイベントをしてきます」と宣言しました。
次に、「この授業ではいろいろなことを体験してほしかったので、ロボットの実機を持ってきたり、一緒にフェアへ参加したりしました。そして、尼崎市内の企業に訪問して、大人の人たちとも話してもらいました。みんなもネットやSNSで情報を見ると思いますが、実際に行って話すと、思っていたのと違うことが多々あります。なので、アドバイスしたいのは、いろんなことに積極的に挑戦して大人に会って話をしてください、行動してみてください、ということです」と生徒たちへメッセージを送りました。
最後に生徒一人一人の名前を呼び、5か月一緒に過ごすうちに知っていった性格や得意なことから、それぞれの良いところをほめて授業を締めくくりました。


取り組みが形を変え、他校のロボット講習会で実現

この体験プログラムは、後日、形を変えて実現しました。2022年2月3日、尼崎市立琴ノ浦高校で「アームロボット講習会 ロボメイツ」を開催。「みかんまんじゅう製造工場」のストーリーを生かし、高校生向けにより実践的な内容にしてアームロボットオペレーター体験の授業を行ったのです。

関連記事:琴ノ浦高校編①キャリア教育に発展するアームロボット講習会

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高校生たちの感想



成長や気付き、今後への希望


高校生たちは、活動を振り返って感想を書きました。さまざまな体験を経て、自分の成長を実感したようです。
「最初はロボットを触るのにも、プログラムや小学生に教えるのにも不安しかなかった。でも、一回一回の授業を重ねるごとに一つずつできることが増えて楽しかった。今回の授業を通して特に学んだのは『挑戦すれば何でもできる』ということ。神戸で開かれたイベントの時、先生の何気ない一言からプログラミングを始めることになった。今までは人のするのを見ているだけだったけれど、最後には自分がプログラミングをする中心となって活動できたので成長したと思う」。
「これから社会に出た時に役に立つと思ったのは、自分の意見を持つこと。社会に出たら人に流されずに自分の意見を持とうと思った。これはグループワークで身についた」

「得意」や「好き」、進路についての発見

授業を通して「得意」や「好き」という自分の気持ち、進路について発見した生徒もいます。
「チラシ作りをしてみて、絵をかいたり、パソコンで編集したりと、自分の得意なこと好きなことに改めて気付く機会になった」
「実際に働いている方から、『こんなやりがいがあって、印刷業はとても楽しい』という声を聴くことができ、働くことに対してのイメージが少し変わり、将来のことも少し想像できるようになった」
「インタビューで聞いた内容は、自分が働き始めた時に参考にできるものがあるかもしれないので、会社で聞いたことを大切にしたいと思う」

ロボットと共存する未来への思い

ロボットを身近に感じ、協働する未来を想像したという感想もありました。
「ロボットのすごさを改めて実感できて、これからともに働く現場が増えていく未来がはっきりと見えた。その現場に直面するであろう、今の小中学生にはたくさんプログラミングの授業をして、ロボットに実際に触れてもらって、ロボットについてより深く知ってもらいたいなと思った」
「普段の生活を送っていく中では知ることのあまりない、産業用ロボットと私たちの未来についてたくさんの知識を得られた。ロボットが関わることによって、これからの時代に適合した、継続的で安定した仕事や社会になっていくといいな」

企業や大学生と交流できた喜び

新型コロナ禍で、また、個人ではなかなか難しい「企業や大学生との交流」から感じるものもあったようです。
「企業の方や大学生の人たちと関わることができて、とても楽しかった」
「インターンがなくなってしまった中でも企業を見学できた。これから使える技術や経験など多くのことを学ばせてもらった」
「初めは気にしたこともないことだらけだったけど、当たり前のようだった商品の裏ではこんなにすごいことが起こっているとか、機械の作業も含めいろんなことを知った。とてもいい経験になった」

コミュニケーション力の向上

コミュニケーション力の向上を挙げた生徒もいます。
「前は、人前で話すことが恥ずかしくて苦手で、自分の中で案がたくさん出ていても言えなかったことが多かったけれど、授業が終わった今では自分からたくさん意見を発表できるようになった。コミュニケーション能力が身についたように思う」
「みんなの前での発表で大きく成長した」
「気持ちを込めたチラシ作りや動画づくりは、気持ちを精一杯伝えられるような言葉選びや分かりやすさなどが重要だと学ぶ機会になった」

学びを生かす、これからへの希望

授業で学んだ技術や感じたことを生かそうとする、未来への希望の言葉も聞かれました。
「これから働いていく中で、パソコンの操作やプログラミングはこれから役に立っていくと思った」
「パソコンで何かをする機会は必ずあるはず。この学んだことは忘れず生かし続けたい」
「今回授業で習ったチラシのつくり方やプログラミングの仕組みは、これからも役立つ部分があると思うので、活用したい」
「学んだことをたくさんの人に広げていきたい」
「高校生フェアで子どもたちから笑顔をもらった。自分も笑顔を届けられるようになりたい」

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高校生の授業に伴走した大学生の感想

高校生との違いを実感し、接し方を変えるきっかけに

大学生に、高校生の授業をサポートをした感想を聞きました。
「今回のインターンシップでは、初めは高校生の立場や知識量を考慮しているつもりでいたが、全然実態を理解できていなかった。高校生と大学生でインターネットに関する知識や技術に大きな差があった。高校生たちはパソコン自体に慣れていなかった。IT化が進み、大学で日常的にPCやネットワークコンテンツを利用している学生とは全く違う環境にいることを実感した。加えて、自分には大学で知らず知らずのうちに身についたPCの知識や技能があると気付いた。
また、協力して企画を進める中で、高校生から、大学生からは出てこないようなアイデアが頻繁に出てきた。生活環境や学習環境に違いがある者同士が意見を提示し合うことは、企画の上で俯瞰的な意見を出すためにも必要かもしれない。
これらの気付きから、オープンキャンパスで高校生に接する時に、高校生と大学生両方の知識や経験値を考えて行動できると感じた。 大学生の『当たり前』を疑い、高校生の疑問や不安を取り除くことに役立てて、より良いオープンキャンパスを展開したい」。

まとめ

2021年11月、高校生(商業)フェアでロボット体験プログラムや宣伝チラシについてのテストマーケティングを実施。この結果をもとに、年が明けた2022年1月、小学生向けロボット体験イベントの内容を改善し、クレーンゲームから「みかんまんじゅう」の製造工程というストーリーに変えました。準備は着々と進みましたが、新型コロナウイルスの感染拡大状況が悪化。イベントは中止になってしまいましたが、それでも高校生たちは、「この経験は次につながる」と前向きでした。
商業学科との2021年度の活動レポートはこの尼崎双星高校編⑨までとなります。
次回、尼崎双星高校編⑩は、同校の情報技術部との活動レポート「尼崎双星高校編⑩ロボット好きな情報技術部員と地元ものづくり企業の交流」です。

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